笑顔は輝く

現在10才5ヶ月のミロは、
一年前に受けた頸椎生検手術を境に、
今までよりもグッと体力が落ち、生活もガラリと違って来た。

人間と同じで年を取ると、体温調整がうまくいかなくて
梅雨時の湿度の高さには、相当参っている。
ラブは、気温より高い湿度に弱い。

今までのミロは普段、ハアハアとする呼吸音もあまり聞こえず、
常にヨダレを出す犬もいるが、
ご飯の時以外のヨダレも出すことも無く・・・。
常にヨダレを出す犬は、接する時に躊躇される。

特別養護老人ホームに入所されている、
おじいちゃんおばあちゃんは、体温調節がうまくないせいか、
室温が高めに設定されている。
特養の2階は、湿度も相当高く・・・。

午前10時過ぎに特養の玄関に入った直後は、一瞬涼しく感じる。
が、2階のエレベーターを下りた辺りから、空気が暖かく感じる。
湿度は相当高いが、おばあちゃんたちは
カーディガンを羽織り涼しい顔をしている。

おばあちゃんたちが待つコーナーにたどり着いた途端に
ミロは、ドテッ!とへたり込んだ。
すでに、ハアハアと息が荒い。蒸している・・・。
若く日本犬のコロは何ともない。

今までは、おばあちゃん達の眼差しが
全部自分に注がれているのがわかると、
一人一人に挨拶をして回っていたのに・・・。
ミロも年取った!

ミロを見て、
<あら、ジョイ君しばらくじゃない、今まで何処に行ってたの?>と、
話しかけるおばあちゃんがいる。そのおばあちゃんと接する時は、
ミロじゃなくジョイ君という事にしている。

高い湿度に参って、ドテッ!と寝そべったミロを見て
おばあちゃんは、<ジョイ、眠いの?>と話しかけた。
ミロ、しょうがないなぁ・・・と思いながらも、
ねんねんころり・・・とミロを撫でながら子守歌を口ずさむと・・・。

車いすのおばあちゃんは、完全版の子守歌を歌い出した。
子守歌なんて、中途半端にしか歌えないけど、
おばあちゃんは、2番まで最後まで歌った。
声量があり、音程もすばらしい。

聞き入ってしまった。何だか懐かしく、とてもやさしい気分になった。
思わず手をたたくと、その場に拍手が起きた。
拍手されておばあちゃんは、もう一度歌い出した。
湿度が高くてへばっているだけなのに、ミロは目を閉じた。

<ほら、寝てしまった・・・>。
犬を飼った経験がある人は、気持ちが豊か。

いつの間にか、場に加わった車いすのおじいちゃんがいた。
職員さんの話では、普段は全く言葉が出て来ない人らしい。
職員さんにミロの名前を聞いたおじいちゃんは、
<ミロ・・・>と声をかけた。

寝そべっていたミロは、のっそり立ち上がると、
おじいちゃんの車いすまで近寄って行く。
手を伸ばすと、ミロの頭まで届いた。<ミロか・・・>。
ミロっていうのか、お前は?とでも言うかのように。

晴れやかな顔をしていた。

一瞬でもいい。
ジョイ君でもいいし、
嬉しそうな顔をするのは久しぶりでも
この場でそれが出来るのなら、ワタシも嬉しい。

ボランティアで特養に来るようになって4年あまり。
当初から知り合いになれたおばあちゃんの中には、
最近では車いすになったウエハラさんがいる。
時は流れる・・・。

ウエハラさんや何人かのおばあちゃんは、
今では身内のような感じさえある。
時は流れる・・・。
この人達と知り合えてよかった・・・。

人生の最終ステージで、
ミロを介して、ミロに少しでも癒されてもらえれば
こんなハッピーなことはないね、ミロ・・・








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